「樹木プレート」制作のご依頼があったのは、世田谷区にある「あかつつみ幼稚園」。園舎が神社に併設されている歴史ある幼稚園です。
樹木プレートを設置するのは、神社の境内に生えている樹。どんな樹が生えているのか確認するため、まずは弊社の方で調査をさせていただきます。判断が難しい木もありましたので、樹木医と連携して、木の特定を進めていきました。
プレートをかけたい樹の種類が判明したら、先生たちにサワラで作った無地のプレート(神社なので絵馬型にカスタマイズしたもの)と、樹に熱で文字を書くことができるヒートペンをお渡しして、園児たちに伝わりやすい言葉で、樹種と説明文をあらかじめ記載してもらいました。
冬の日の朝。
子どもたちに境内に集合してもらい、実際に木にプレートをかけて回ります。
この日一番最初にかけたのは「ウラジロカシ」のプレート。カシの仲間ですが、葉っぱの裏が白いことが名前が由来になっています。この地域には珍しい樹です。
なぜこの樹がここに生えているのか? それには秘密がありました。
実は、ここから離れたところに、もう一つ、樹齢百年はゆうに超えるであろう、ウラジロカシの大木が生えているのです。おそらく、先のウラジロカシは、この大きなウラジロカシの子どもだということが予測できます。何気なく生えている樹のルーツがわかって、子どもたちも感銘を受けた様子でした。
次は、ケヤキとクスノキ。街路樹や公園でよく見かける樹で、材木にもよく使われるものです。
これくらい一般的な樹なら、樹皮や葉っぱの観察ならどこでもできます。ここでは、木を使ったものづくり集団であるというわたしたちの強味を生かして、“樹の中身”を子どもたちにお見せしました!
用意したのはケヤキとクスノキそれぞれを製材した材木。ケヤキは赤く、クスノキは白。ぱっと見ただけでも違いが明確です。今度はのこぎりを使って、子どもたちの目の前でそれぞれを切っていきます。切る音も切る時間も、どちらも全く違います。ケヤキは密度があり固く、切るまで時間がかかります。クスノキは軽くてあっという間に切れてしまいます。
切った断面は子どもたちに回して、においも感じ取ってもらいました。ケヤキはいかにも木のにおいと思えるようないいにおいがしますが、クスノキはまるでハッカのように鼻に抜けるような清涼感が漂います。
子どもたちは「これ本当に木?」とびっくり。切った後は、それぞれの樹が、その特徴を生かしてどのような道具に使われているのかを説明しました。ひとしきり紹介が終わったら、この2つの樹にもプレートをかけに行きました。
次の紹介はクロマツ。子どもたちには「まつぼっくりの木」と呼ばれている樹です。木肌が黒い松のためこの名前がついています。葉っぱがトゲトゲしていて、乾燥したものはさらに硬度が増して、うっかりすると手のひらに刺さってしまいそうです。
最後はムクノキです。この境内の中にムクノキは複数本あり、新しいものと古いもので、様子が異なります。古いものは苔むしてツタが絡まり、木肌が落ちていました。ムクノキは、樹齢が上がるほど、木肌がむける傾向があるんです。
この時期は冬だったので、実を見せることはできなかったのですが、「実はムクノキの実は食べられて、昔の子はおやつにしていたんだよ」という話をしました。子どもたちは、実がなる時期を楽しみに待つそうです。
また、樹の根元に落ちている葉っぱを拾って、「ムクノキの葉の裏は非常にざらざらしていて、昔はやすりとして使われていた」という話もしました。今度爪を削ってみようかな、という子もいました。
この回は、合計5種類の樹木プレートを子どもたちと設置しました。来年も継続して行います。