木育のはじまり
目黒区・祐天寺駅からほど近い「夢花保育園」。手入れの行き届いた園舎に、子どもたちの元気な声が響きます。
夢花保育園が木育を始めたきっかけは、男性職員からの提案があったと言います。
「もともと園としても、木に触れて自然の大切さを伝えていく、ということを特色にしていました。そういう背景があったので、『保育ナチュラリスト』の資格を自ら調べて取得したスタッフが『木育』を事業として起案したことが始まりですね」
とは、園長の下地先生。2017年、Tree to Greenとともに箸づくりやスプーンづくり、多摩産材を使った積み木づくり※、丸太切りなどの木育講座からスタートしました。
※多摩産材を使った積み木づくり……東京都の助成事業として行いました。
「スタッフがやりたいという声は聞くようにしています。それが子どもたちのためになるのか、全職員が参加して継続できるのか、プレゼンをしてもらうんです。当法人は、全国にグループ保育園があって異動もあるので、たとえ担当した先生がいなくなってしまっても、引き継ぎをしてずっと続けることを約束に現在も続いています」
現在、木育事業を引き継いだ河村先生にもお話を聞きました。
「Tree to Greenのイトウさんに教えてもらった箸づくりを、今年が当園の保育士だけで子どもたちと取り組みました。子どもたちは一年を通じて、箸に少しずつヤスリがけをして、完成したら自分で作ったお箸で給食を食べるんです。それを持って帰って、またお家のひととお話をしてもらっています」
木育講座のひとつのバードコールづくりでは、公園に持っていって実際に音を鳴らして遊んだんだとか。
「やはり、折り紙教材を使ってのものづくりとは準備や片付けの面でも違います。ただ、子どもたちの達成感や五感にうったえる力が木育講座にはあると思うんです」と河村先生。苦労して作ったからこそ、ものを大切に扱う姿が見られたり、遊び方にも変化があったりしたと言います。
一緒に手を動かすことで、共感を得る
下地園長も「よかったのは、保護者と一緒にベンチづくりの木育講座ができたことですね」と言います。
これから「木育」の活動をしていきます、ということを伝えながら、保護者も一緒に手を動かしてもらったとのこと。
「その会に参加できなかったとしても、ベンチというものが残るじゃないですか。話題になりやすく、共感をしてもらうことができましたね」
活動を通じて、自然物を使ったものづくりに興味をもつ保護者の方も増えてきたようです。
木育講座を長く続けている夢花保育園ですが、今年はウッドデッキの交換も行いました。
「2011年から使っている屋上園庭のウッドデッキは、水漏れや破損が多く、外国産の硬い材を使っていたので、子どもたちの裸足保育の際に棘がささり、問題点が多くなってきました」
そこで、屋上庭園と1階部分のデッキを水にも強く、柔らかいのでささくれも出にくい国産ヒノキの材に交換しました。
ここ、夢花保育園に勤務する先生たちは、自分たちで使うものは自分たちでメンテナンスを行っているんです。
下地園長は言います。
「作られたものに対して『壊れましたので直してください』という意向がよく上がってきていたんですよね。自分たちで作ったものだったら、ものを大切に扱えるんじゃないか、という狙いもあります。それとともに、子どもたちが過ごす環境を細かく見てほしいという思いもありますね」
Tree to Greenでは先生に向けた研修として、デッキのメンテナンスの方法や木材の特徴をお伝えするようにしています。
実際に訪れて、園で使用する家具の修繕も行っています。
「ついこの間、東京都から『保育園等による木育活動の支援事業』のお知らせが来たんです。東京だからこそできる木育の内容もきっとあると思います。この事業には補助金も出るし、木育講座から始めてみるのもおすすめですね」